2016年3月13日日曜日

「きみはいいこ」…に想う

栃尾オリナスでの上映
「きみはいいこ」
主演は尾野真千子さん、高良健吾さん

予備知識がほとんどなく、幼児虐待をテーマに
撮られた映画であること。主演は尾野真千子さ
んくらいの知識でこの映画を観ました。
彼女の魅力はNHKの朝ドラ「カーネーション」で
発見していました。
淡々と表情を変えずに話す演技に自然とひかれ
たのです。今回も彼女ならではの、心に秘めた役
のうまさとすごさを感じます。親から虐待を受けて
育った母親、同じことを繰り返す。
もっと、ひどい場面があるのかとドキドキしながら観
ていましたが想像よりもはるかに優しかった。
尾野さん演じる母親の友達の
セリフが何回か繰り返えされます。
「うちのこになろうか?」
と虐待を受けている子供にわざと話かけるシーン
は胸を刺すのです。

虐待こそ見られなませんでしたが、父子家庭になっ
たこどもたちの悲惨な日常をかつての保育園で見
ていた私です。お風呂も入れてもらえません、洗濯
もしてもらえません。髪の毛は伸び放題です。
「せんせい、せんせい」と抱っこを要求する
あどけない笑顔を思い出すのです。
異臭が鼻を突き、私は膝の中に子供抱きながら
顔をそむけたこともありました。保母失格です。
夏になればシャワーをして、着てきたものは洗濯をし
てやりました。いくら父親にお願いしても、仕事と子育
ての両立は難しく聞き入れてもらえないのです。
こんなひどい父親に父親の資格があるのだろうか

それでも、こどもは居残り保育を終え、父親が迎え
に来ると「パパ、パパ」とそれはそれは嬉しそうに
笑って父親の腕にぶら下がるのです。
これが親子ってものなんだと若かりし私が経験した
ことでした。

小学校教師役の高良健吾さんも
素直で伸び伸びとした演技を見せていました。
教師と一人の少年の関わりが私には一番苦しく、
心に重くのしかかってきました。
父親は母親の再婚相手です。仕事につかず、
ぐうたら亭主でしょう。
子供には食事も満足に与えない、5時までは家に
帰ってきてはいけない、おそらく虐待されているの
でしょう。新米教師の葛藤の中で、彼はひとつの良
いことを発見するのです。
「家族の人に抱いてもらうことが宿題です」と
頭をなでられたり、頬を寄せ合ったり、抱きしめられ
ることはスキンシップであり、幼児教育から学童低学
年教育にはとても大切な愛の薬だとは思います。
しかし、この映画の中で、監督は何が言いたかった
のでしょうか
少年には少年を抱きしめてくれる家族がいたので
しょうか
30人学級ならば30人がそれぞれの事情があるは
ずです。正しい事がもしかしたら正しくなかったか
もしれないと宿題を出した日から登校していない
少年が気になって気になって仕方なかった。
だから勇気をだして少年の家の戸をたたいたので
はないだろうか、この監督の意図するところはまだ
つかめていません。ただ、私も若い頃の失敗が
よみがえるのです。
月曜日の朝
「さあ、今日は昨日どこに行ってきたかな?お父さん
お母さんと楽しかった思い出を描きましょう」と
言ったのです。すると、そっと私のところにやってきた
女の子、「わたし、どこもいかん、だって父ちゃんも
母ちゃんも田んぼ」と友達は遊園地や公園、デパート
に行ってきた楽しい話ばかりしているのですから・・・。
映画の中に若き日の自分が映って見えました。
この教師は何に気づいて、少年の家の戸をたたいた
のでしょう ・・・・・・。

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