「翼の王国」が豆撰に届き、
間もなくのことです。
突然、奇跡のように電話が鳴るのです。
「翼の王国を読みました。栃尾の油揚げを送ってください」
嬉しくって、嬉しくって、それは、一週間以上も続いたのです。
こだわって、こだわって、作ったはずの栃尾の油揚げでしたが、
思うように売れず、資金繰りに四苦八苦、「こんなはずでなかった。
どうしてあぶらげやをはじめたのだろうか」と
当時の私は後悔ばかりして、何度もこっそりと涙を流していました。
辛い日々でした。
それが佐藤隆介先生の記事のおかげで、予期もしない反響です。
私たちの失望は希望に変わっていきました。
栃尾で一番美味しいといわれる「栃尾の油揚げ」を作ろうと
夢を掲げ、豆撰を立ち上げたはず。
後には戻れない、進むしかないと気づいたのです。
それからも、数回佐藤隆介先生の著書に紹介していただきました。
・・・・・・それなのに、ここ数年その御恩も忘れ音信不通の不義理をしていました。
「池波正太郎の愛した本」を今こうして読み返すと
この本の中に
越後のほぼ真ん中の山中にある栃尾の「豆撰」から油揚げを取り寄せて食べるたびに、
ああ、これを一度亡師に食べてもらいたかったな・・・・・・と思う。と書かれていたのです。
とても、熱いものがこみ上げてきました。
あれから25年も過ぎ、今ではあの頃よりお客様も増え
豆撰にあつあつの油揚げを食べに、わざわざ遠くからおいで下さる方もいます。
佐藤隆介先生に出会えて良かったことを今あらためて
思い出しています。
そして、28年目を迎えた豆撰です。その間にたくさんの方と出会いました。
皆様、ありがとうございます。
挫折しそうになったら、この道、この本を思い出すことにしようと思っています。
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