2022年6月15日水曜日

ぼんやりとあの橋を見ている

 


一日中この部屋にいると

朝から晩までウグイスは鳴いている。

知らなかった。

この部屋から、あの橋が見える。

2004年7月13日

に我が家が土砂の下になった日である。

この橋の建設が我が家を押し潰してしまっ

たのだ。

みんな知っている。当時娘はある環境

について調査する会社に勤めていた。

その会社の社長を始め

大手の土木業者の知識人、娘の恩師

などそうそうたるメンバーが集まって

私的調査をしてくれた。

結論から言えば、この橋の計画は

無謀な計画だったそうだ。

この地帯は地滑り地帯と認識されていた。

というのである。

それではなぜ、ここに橋がかけられたか

それはまさに利権というものだろう。

大きな土建業者の裏には大物政治家がバッ

クにいた。

下請け業者は知っても知らないふりをして

工事を進めた。

娘は陳情書を作った。それはまさに

たくさんの方の調査や意見をもとに

作った厚い文章だった。

この頃、私は仕事と次なる住まいのことで

右往左往していた。

夫はこれまた厄介なことに

現役の市役所勤め、それも建設課で

あったがため、公に自分の名前を出すこと

をためらった。家も土地も崩れた家族の

再建をしなければならない。

だから、お上に逆らうことは

できなかったのであろう。

ここから見るあの橋は下田方面に

抜けるのには便利な橋となった。

しかし1分に一台も通ることはない。

陳情書はその後どうなったのか

ただの紙切れとなって

廃棄処分されたのだろうか。

ぼんやりと橋を眺めて

今、お友達を待っている。

日日是好日







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