2025年9月22日月曜日

遠い山なみの光

 国宝と違って人気がないようで

Tジョイ8番シアターはガラ空きだった。そのおかげでI席の中央に指定席を選ぶことができた。

過去と現在が交差して話は進む。主人公の過去は広瀬すずさんが演じ、現在は吉田羊が演じる悦子と二階堂ふみ演じる佐和子が表現する戦後の日本をミステリーに描いている。原作はノーベル賞作家のカズオイシグロである。映画を観る前に原作を読んでおくべきだったかと謎めいたストーリーに頭の中がもやもやになってスッキリしない。わざと謎かけにしている演出は老人を悩ませてしまった。その謎かけをうまく演じる3人の女優の演技は圧巻だった。ただ広瀬すずさんと吉田羊さんの同一人物には少し温度差を感じた。この映画が観たかった理由は実はこの3人の演技が見たかったのではない。脇役の悦子の義父役の三浦友和さんがどんな役でどんな演技をするのか観たかったからだ。なるほど戦前と戦後の教育方針が180度違っても、信念の変わらない教育者もいたのかとあらためて知ることになった。間違ったことを教えていたとは思っていない正義を演じていたようだ。人の役目とか信念は時代と共に変化するのが当たり前の社会と民主主義のもとで育った老人はそう思っていた。だが戦争時代を生きた人にとっては全部が「あんぱん」の主人公たちとは違うということか?脇役かもしれないが三浦友和演じる義父はこの映画のテーマを訴えていたようだ。なぜならラストシーンで二階堂ふみ演じる佐和子と広瀬すず演じる悦子が入れ替わっていたからだ。戦後に子供背負って女ひとつで生きるのは並大抵ではなかっただろう。そんな佐和子の生き方を否定しながらも悦子は心の底で羨ましいと思っていたような気がする。だからイギリスに渡ったのは悦子だったのではないだろうか?佐和子の子は悦子の子とダブル。悦子の子がどうして自殺したのか自殺を認めたくない母親の気持ちが切なく映っていた。

何もかも戦争のせいにするわけではない。しかし戦争が与えた影響は今も続いているような気がする老人です。

説明もナレーションもなく観る側がどう感じるかわからないミステリアスな映画だった。

被曝の傷なのか虐待の傷なのか、なぜ黒い影が悦子なのかわからない。

結論は出ないままである。原本を読むべきか悩む老人。そして虚しさだけが残る。

日日是好日




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