2016年11月14日月曜日

髭剃りを買いに、そして桜を愛でる

10時半まで
エイトマンになって、ゆうパックの荷物作りを頑張り135個の包装を終えた私は
実母を横に乗せ叔父の病院へ一直線。
病棟移動の為です。
今までは、普通病棟、これから緩和ケア病棟のベッドを待つ間の
療養病棟での待機です。
「おはよう、具合はいかが」と明るくご挨拶。
ニッコリと手を差し出す。
ぎゅっと握りしめると少しあたたかい。
鼻から管を入れ、酸素吸入をしています。
たった3日の間に、叔父の顔は黄色くなり、くぼんだ目の脇は
大きな皺が波を打ち、難儀さが伝わるのです。
叔父の姉は3日続けて病院に泊まりました。
今日はお風呂に入りたいからと
私に付き添いを委ねてきました。
すぐに承諾する。内心は豆撰にも、家族にも病院に泊まるとは言っていなかったので
ちょっと困ったのです。
でも、叔父の
「そう、礼子ちゃんが泊まってくれるの」と
それはそれは安心したようにうなづくのです。
いくら叔父の姉とはいえ、高齢です耳も少し遠くて、看護師さんや主治医の話が
聞こえないことがあるようです。その都度叔父が繰り返し叔母に伝える。
その時の表情は、昔と変わらない姉弟喧嘩のように私には映り
私は心の中で笑っていました。

お部屋の移動完了。療養病棟の一室は
少し広くて、トイレも広いのです。
でもこのトイレを使うことはもうできないかもしれません。
しばらくすると、
「髭が伸びてね、おじさんは電動式の髭剃り持っていないから」
よーく話を聞くと、電動式なら看護師さんが剃ってくれるのだそうです。
ひとっ走りして買ってくるからと
病院のすぐそばにあるムサシに髭剃り求めて、ダッシュ!
髭剃りを買うのは生まれて初めてです。
店員さんに聞くと、髭が硬いか柔らかいかどっちですかと問われ
私は叔父の髭を触ったことはないのに
「柔らかいと思います」と答えるのです。
だって、頭の頂上はお日様ですもの。
そして、看護師さんから、綺麗に剃っていただきました。
モルヒネ注射は痛みの緩和をしてくれますが、その分浅い眠りが続くのです。
しばらく眠りの道を彷徨った叔父が突然
「来年の桜はどうだろうね」
悠久山の桜福島江の桜の話をするうちに、なんと素晴らしいことに気づきました。
iPadには栃尾の、私の大好きな桜がおさめられていることを。
早速、iPadを開き、木村先生のお家の桜、表町の桜を見せてやりました。
すると、くぼんで半開きの瞳が大きく開き、

「綺麗だね」と声も瞳も輝くのです。
私は夢中になって、五分咲きから満開の桜を次ぎ次ぎに見せてやりました。
そして、もう一つ思い出したのです。
この中に、豆撰の動画があることを……。
叔父は栃尾の風景、秋の棚田を見て、
「なんとも言えないね」と感慨深くつぶやきます。城山が映ると、
「礼子ちゃんと登ったことがあるよね」というのです。
私の心はもう締め付けられ、涙をこらえ、「覚えていたの」と
笑い涙になりました。
栃尾の油揚げを揚げる妹を見て、叔父は嬉しそうに微笑む。
社長で義甥の登場には、「正樹さんだ」と実家の跡取りに対する敬意を表すように
見入るのでした。
それから、この動画を撮ってくださった方は映画監督で私の友達なんだよと少し自慢をしました。メジャーではないけど、いい人なのよ。というと
「そう、風情があるね」と讃えるのです。
豆撰と栃尾を懐かしむ人のために作った動画は、叔父にとって、何よりのプレゼントであり、お見舞いだったと思え、ジーンとしてしまいました。



















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