お昼休みに母を見舞うようになってから、ずいぶん月日が過ぎました。
今日のお天気は大荒れです。
少し時間に余裕をもって、妹と病院に向かいました。
途中、お昼ご飯にパンを買い、
病院の5階の小さな面談室でいつものように食べていました。
すると、80歳くらいのおばあさんが
「御邪魔します」とご挨拶。私達姉妹も会釈をしました。
おばあさんは、ご自分で作ってきたお弁当をレンジで温め、
隣のテーブルに腰をおろします。
しばらくすると、
「すみません、ふたが開かないのです。昔ものですから
お弁当があけられなくて・・・」
私はそばに行き、お弁当の蓋を開けようとするけれど
なかなか開きません。妹にお願いしても、開きません。
私と妹は「熱くなってしまったので、少し冷ましましょう」
おばあさんは「すみませんでした」とちょっとがっかりの表情です。
3分くらいしてから、妹がふたたび挑戦しました。
開きました!
「ありがとうございました、これでお昼が食べられます」と
優しい笑顔で御礼を言います。
すると、今度は紙コップと水筒を私達のところへ持ってきて
コーヒを入れてくれました。
それから、おばあさんの話がはじまりました。
「私達は昔の人だから、夫と手をつないだことなどありませんでした。
でも今私は病気で何もできない夫と手をつないでいます。
私は目が悪くて、白内障だといわれました。
幸いに手術をすれば治ると言われたのですが…。歯も悪くて…
いいところが何もないのです。でも私にできるたったひとつのことがあります。
夫のそばにいてやれることです」と嬉しそうに笑顔で話すおばあさん。
お弁当のふたが開けられないことを
私たちに話し助けを求める可愛いくて、品のあるおばあさん。
「お先に行きます。またお会いしましょう」とご挨拶して私達は母のところに
向かいました。
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