昭和26年制作
新藤兼人脚本・監督
主演「乙羽信子」
新藤兼人監督の初めての作品らしい。
映画の背景は昭和17年、学徒が戦地に行く時代である。
この時代に映画を作り続けることは、とても大変な事、ましてシナリオライターで
一人前になることは、相当の困難があると想像させます。
どこからどこまでが自叙伝なのかわかりませんが
宇野重吉さんの演じるライターと新藤兼人を重ねながら観ました。
映画の中のセリフのように、この映画には少し物足りなさを感じますが、
その分ストレートに表現され、誰にもわかりやすく、見やすい映画となっていました。
長屋の二階や鴨川での魚とり、暗闇で将棋をさす、ふたりで見つめ合うなどのシーンに、
色がほしいと思ったほど、背景にこだわって撮影されたのではないだろうか。
また、口に含んだ水を霧吹きにするアイロンかけシーンにはびっくりさせられた。
こんな時代だったのかと、思わず笑ってしまいました。
ラストの妻が息絶える前に手鏡でアルバムを見つめるシーンはジーンときます。
そして、そこには
妻としての無念さと幸せの両方が映し出されていたように思う。
悲しく切ない結末なのに、不思議と涙があふれなかったのはなぜだろうか。
と考えてみた。この映画には辛さの中にあふれんばかりの愛が
あったからではないだろうか。乙羽信子さんの笑顔と女優としての
感性に勝るものはないような気がした。
戦時中の様子を後世に残す大きな仕事を新藤兼人 監督 は生涯貫き通した。
戦争を知らない私たちにも訴えている。
映画とは、残されるものであり、続くものだと改めて思う。
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