お日柄も良く、紅葉狩りを満喫した一日でした。ところが、私たち老夫婦にいつものように(いえ、いつも以上に)愕然とする出来事が起きたのです。
荒川サービスエリアのトイレに立ち寄り、バスに戻ったときに事件が発覚しました。慌てて添乗員さんを呼び止め、ことの次第を説明します。バスの中には45名ものお客様がいらっしゃいます。夫は小さな声で事情を説明し、私も驚きと怒りに近い感情で、大きな声を出したくても出せないまま車内に佇んでいました。
そんな私たちを乗せて、バスは走り続けます。添乗員さんはすぐに携帯で管理事務所に電話をしてくれました。息を呑みながら結果を待つ間、夫は生きた心地がしなかったことでしょう。しばらくして、私の携帯が静かに震えました。画面を見ると、末尾が「110」の番号。警察からです。なぜ私の携帯がわかったのかも、丁寧に説明してくださいました。
「はい、妻です。ただいま旅行中でして……。今日は取りに伺えませんので、明日伺います。お礼もしたいので……」
日本は本当に素晴らしい国です。届けてくださった方は、お名前も告げずに立ち去られたとのことでした。そういえば私も25年前、沖縄でタクシーにバッグを置き忘れた際、ホテルに無事届いたことがありました。改めて日本という国の素晴らしさを実感するとともに、私たちはなんて幸運の持ち主なのだろうと、すべての人に感謝しました。まさにバスの中で起きた、我が家の「踊る大捜査線」でした。
事件も無事に解決し、バスは丸池様へ。湧水の池はエメラルド色に輝き、湧き出る水が美しい波紋を作っています。まわりの木々はおとぎ話の魔法にかかったように手足を広げ、今にも池を歩き出しそう。ひょっこりとその陰から7人の小人が出てきそうな、小さくも神秘的な池でした。
鳥海山五合目では、赤いナナカマドの実が珊瑚礁のように輝き、青い空と調和してまるで「山の宝石」のようでした。標高2,236メートルの鳥海山は、富士山の如く悠々と聳え立ち、私たちを出迎えてくれます。そして左手には日本海、遠くには小さな飛島が見えます。山にいながら海まで見渡せるなんて、なんと贅沢な旅でしょうか。
日日是好日