長い夢だった。
大勢の人の波の中で二人の老人を見つける。ひとりはよく知っていた男性だ。一緒に肩を並べ屈託のない笑顔でその男性と話をしている。私の知っている男性の奥さんではなかった。
しばらく私の夢は続く。人の波を追いかけていく。逃さないようにと。その時間は心臓が壊れそうなくらい大きな音を立てている。とうとうふたりをとらえる。「あなたは嘘つきね」とはっきりとした言葉を投げつける。ふたりの男女は何を言っているのかとわからないようできょとんとして立ち止まる。その前に女性は男性の手を掴んでいた。なぜこの男性は私の知らない人といるのかわからない。この人の妻は死んだのだろうか。それともこの人の妻は元々この女性だったのか。とにかく私の知らない女性だった。私は「好きだった。ずうっと、そして今も」と照れることもなく言葉に出す。迷惑そうでもなく、嬉しそうでもなく、ただ黙って告白を聞いている。夢は続く。無言の会話。何時間も続いたその空間は三途の川を渡るような気分だった。なんだかよくわからないがせつなく、悲しくて布施明の歌のようだ。
その女性は私の告白を聞いても動揺もせず、終始屈託のない笑顔で男性を見つめていた。無言の会話から、少しだけ表情が変わり「ごめん」と謝る顔になった。その途端本当に愛し続けた夫と幼い頃の娘が夢に登場する。ジ・エンドだ。
短編小説を書く笑
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