2025年11月19日水曜日

「ライオンのおやつ」小川糸

 いとこからのおすすめ本

3冊目は「ライオンのおやつ」小川糸著

小川糸さん 敬称はさんでいいのだろうか?様でもない、氏も合わないような気がする。この方の作品には気負いとか作家であるというこだわりが感じられず、自然体である。だから小川糸さんと呼ばせてもらいます。

一生懸命に生きてきたからと言って、悩みがない人はいないだろうと思う。という私も世間から見たら悩みやストレスのない順風満帆の初老女であろう。しかし、そうでもない。心の中にとどまって動かない灰色の雲が潜んでいて、泣いたり、怒ったりする。

そんな時に小川糸さんは寄り添ってくれる作家さんです。もやもやした気分の時、「ライオンのおやつ」ページを捲る。自然体である。読みはじめに叔父をホスピスに入院させた時を思い出す。叔父に付き添う日々は苦しかった。この本の主人公海野雫さんと叔父が重なる。叔父にも覚悟が感じられた事を思い出す。死期を悟った叔父には不安を感じることがなく穏やかな顔だった。雫さんの最終章にはいろいろな人との出会いがあって、人生を生きたと思う。

ライオンは百獣の王であっても必ず死を迎える。その最後の場所は敵に襲われ心配のない天国に近い安心場所がライオンの家である。つまりライオンの家はホスピスである。死を覚悟してホスピスを選んだ雫ちゃん、そして食することは生きることを教えてくれたライオンの家に深い思いやりと優しさを感じる。私の父は死の間際にケンタッキーとバナナが食べたいと言った。叔父は氷を何回もねだった。雫ちゃんのおやつはミルククレープだった。そしてお父さんと妹さんと人生最後のおやつを食べる幸せに涙が溢れてとまらない。

複雑な親子関係の中で強く優しく生き抜いた雫ちゃんに私もケンパイする。

いとこに勧められたこの本は優しいことがいっぱい描かれていていました。現実的ではないかもしれないけれど私はこの本を読み終えて、心がホッとした。そしてまた小川糸さんの本を読みたいと思っています。

日日是好日


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