2019年12月15日日曜日

忘れていた日々

書きかけて
そのままにしていた
1ページを眺めています。
3年前のある日の日記。


新宿から総武線に乗って
千葉に向かいます。
浜田マハさんの「旅屋おかえり」をおともに。
読みはじめると、この先に出会う叔父の顔が浮かびます。

電車から朝陽がめくったページを照らす。
この本の内容と私のこれからの行動が重なって
光と影の線路を走っているようでした。

今日が62歳の誕生日である事にも
因縁のような、しなければならない運命のような気がしてなりませんでした。

千葉駅から病院へバスを利用し
約10分の移動です。
叔父は少しは具合が良くなっているだろうか、その反対だろうかと不安な気持ちで
病院のエレベーターに夫と乗り込む。
なんだか戦場にでも行くような心が沈むのです。

ベットの周りはピンクのカーテンで仕切られています。
少し立ち止まって、ためらう私の背中を押す夫。
我を取り戻し、とびきりのつくり笑顔で「おじさん」と声をかけると同時に
私の右手は叔父の痩せて骨がむき出しの左手を握ぎりしめていました。
アイコンタクトをとる私と叔父。
骸骨のように、瞳はくぼんで大きく見えます。
はだけた寝巻きから肋骨はまるで洗濯板のように痩せ衰えていました。
すぐにでも連れて帰りたいと思う心と反対に
このまま、この病室で終焉を迎えた方が良いのではないかと
複雑な思いが交差するのです。

私は叔父と夫が話している間に看護師さんと叔父の症状について聞き、
長岡の病院への移動に自家用車では無理なのではないかと話し合う。
結果民間救急車を利用することになる。
いつ、長岡に移動できるのだろうか・・・・・・。

たった1時間の滞在でした。
叔父を見舞って、会議に参加する。この日のもう一つの目的は
仕事でした。幕張での会議終了、大きなビルに押しつぶされそうになりながら
セッセと駅に向かいました。
夫が待ってくれています。付き添ってくれた夫に深く感謝し
東京へと向かいました。

「旅屋 おかえり」の本を取り出し、続きを読む。
この本の内容が、胸を締め付ける。
病に倒れた若い女性の代わりに桜の旅をするのです。
そして、その女性と父親のわだかまりが綴られているのです。

残念なことだ叔父はこの二か月後に長岡の病院で
私たち身内に見守られ他界した。

私はこの日を忘れていた・・・・・
本の内容も忘れていた。






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