2023年1月15日日曜日

 携帯から

ニュースを見た。

時計は23:28

眠気がどこかに行ってしまった。

無理やり携帯をはなし、目をつむる。

しばらくすると

一通の厚い封筒が枕元に届く。

手を伸ばし

携帯のあかりで

宛名と差出人を読む。

懐かしい綺麗な文字であった。

昨年の暮れに、お元気ですかとお互いが

歳をとったことを話した。

「髪の毛が薄くなって」と言う。

その隣で奥さんは少し首をちじめ笑った。

私は「背中を骨折してやっと少しだけ

仕事をしています」と言う。

あぶらげを買ってレジに行き

レジをする姪に

「あまり仕事はさせないでください」

とあの人はつぶやき帰る。

少しは心配してくれたのか。

その人の文字である。

43年前に開いた一通と同じ文字である。

「僕も結婚します。あなたが結婚する

とお聞きして本当に安心しました。

よかったと思っています」

偶然にも私の結婚式と同じ日だった。

夫となった人は

役所勤めである。食いっぱぐれはないけど

安月給で

新婚旅行に行くのに

長岡までバスで行った。

枕元に届いた厚い封筒には

赤い椿の花の写真が入れてあった。

花いじりが趣味です。と庭の写真が

入っていた。花いじりが好きな人は

夫である。

他にも写真だったような絵だったような

便箋が入っていたがよく

思い出せない。

その封筒を枕元に戻すと

まだ子供の娘が

「これなーに」と封筒を開けようとする。

「なんでもないの」と娘の手から

その封筒を奪い、

枕の下に入れる。

43年前、長岡行きのバスは2台も

出ていた。私の乗ったバスの隣に

あの人がいた。

封筒を枕の下に入れてから

携帯を取り出して時間を見ると

0:50である。

私は1時間以上

夢の中を彷徨っていたのだろうか。

隣には寝息を立てている夫がいた。

日日是好日



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