2016年11月2日水曜日

認知症の頭の中は複雑です

実母の認知症が始まったのは
父が病に倒れた頃ですから、13年以上前になります。
症状は、徐々に進行しています。
うつ病と認知症の間のような感じです。
一番変わったことは無口になったことです。
イエス、ノー、わからない(意志表示をしないことです)、この3つの選択肢以外
滅多に言葉を発しません。
唯一、潜在的に脳の中に潜んでいることは
赤ちゃんと同じに愛想笑いをすることです。
豆撰にお越しのお客様で母を知っている人は、「元気だかの」 と声をかけます。
すると、優しそうな笑みを浮かべてうなづくのです。
お客様が帰られた後に「知っている人」?と聞いてみると
首を横に振るだけです。
そんな毎日の中、突然頭の中の入り組んだ血管がつながるのです。
摩訶不思議な現象です。
年に一度か二度の事です。
その日が先日、突然眠りから目をさまし回線がつながったのです。
まるで台風の襲来です。
盛んにおしゃべりをします。そこで私は4枚ほど書き上げたばかりの原稿を
渡してみました。結構長い時間、その原稿を一枚ずつまくり
完読し、4枚書いたのかと確認をするのです。
この原稿は、今週末に豆撰のDMの中に同封する、私のお手紙です。
その内容を把握できたのでしょうか
東京の叔父さんはどこが悪いのかと質問をしてくるのです。
私が答えると、それはそれは悲しそうな顔で天を見つめ、深いため息を漏らします。
この日、回路は全開。
そこで、先日お友達と一緒に紅葉を見に道院で撮った、母の写真をパソコンで
開いて見せました。
満面の笑みで「いい写真だ」と嬉しそうに話すのです。おまけに、他にはないのかと催促します。
もう一枚をアップすると
これもいいと満足そうに言葉を発し
どっちがいいか、さっきの方を見せてほしいといいます。
この繰り返しを数回した後に、やっぱり、こっちが良いと
判断を自分で下しました。
そして
「この写真をでっこうしてくれ」と笑みを浮かべるのです。
この日は、母は味噌汁も作ったそうです。
これまた、びっくりです。
妹曰く、20年くらい前の母に戻っているらしいのです。
そして、夜になり眠りに入ると…朝になってもその日は起きることなく
眠り続けたそうです。
まるで村上春樹著「海辺のカフカ」に登場するナカタさんのようだと思いました。
私自身が自分の中にナカタさんが存在しているように
思うことがあったのですが、私ではなく母であり
その血を受け継いでいるのは私かもしれない不思議な現実です。

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