2017年8月9日水曜日

最後の晩餐

朝5時過ぎ
洗面台の蛇口から流れる水の音
少しだけ開いているカーテンの隙間から夜が明けたことを知る

朝食のクロワッサンを鞄に入れ
テーブルの上に置いてある、小物入れの陶器から
取り出す金属音は耳に響く
「おはようございます」と声をかけてやりたい
「ご苦労様」と
それは私の心の中の声

相手は靴の音、鍵の音
音をできるだけ消している
起こさないようにと
それが相手の心
寝たふりをしている方が親切
それと、日本語でこの気持ちを伝えるの難しい
心の翻訳辞書はない

七時過ぎまで 、隣室で眠っているふたりの為
眠くないのに、起きようとはしない

携帯を取り出し、夫や妹、友達からメールが入っていないか確認する
日本とアメリカでは16時間の時差がある
この時差がとても厄介
こっちが電話をかけたい時は日本は夜中
そしてこの時差が気になり、一日中携帯を離さない。
誰のメッセージを待っているのだろうか、朝から夜中まで一日中
携帯と仲良し
日本ではほとんど携帯を持ち歩かない
みんなあきれていたほどだ
まるで真逆の毎日
そっと簡易ベットをたたみ、シーツをたたみ、リビングの片隅に片付ける


コーヒーを沸かしながら
目玉焼きとサラダを作る
小さな鍋に、ミツワで買ってきた昆布と鰹節で出汁をとる
これはアメリカ生活でも、譲らない
人参、ジャガイモ、ネギなど冷蔵庫にある野菜をたっぷり入れる
仕上げにすり鉢ですっておいた味噌を入れて出来上がり

味見の一口 は受け継がれる母の香りは自己満足

暑くもなく冷たくもない、ぬるくなったコーヒーを飲み

iPadで今日のニュースを見る
もちろん日本版
台風情報、新潟それも中越地区上空を通過するらしい
心配していると妹と夫からも情報が入る
妹には豆撰のプランターをお店の中に入れて下さいと依頼。
夫からは嵐の前のしずけさだと
ピンクに近い赤い芙蓉の花が
想いと一緒にラインで届く

ベニスの朝は曇り、涼しい風がベランダから吹いてくる

朝食を終えると、洗濯物を大きなカゴに集めて
小銭入れの小さな缶と鍵を持って、一階のコインランドリーに
エレベーターを待つ間、エレベーターの大きなドアにむかって
独り言をいう
これが結構いいのだ。誰もいないところで、本音を声にだす。
喉がカラカラの時に
ゴクゴクと冷たい水をいっきに飲み干したようないい気持ちだ

4階に戻り、今度は掃除だ。充電式で10分しか充電時間はない
寝室とリビングを急いで掃除機をかける
その前に食洗機を回す
床磨きにトイレ掃除、お風呂掃除
また一階まで行って今度は乾燥機にかける番だ
すると、タオルにTシャツにテッシュが満べなく混じっている
愕然
一枚一枚、大きなゴミ箱の上でホウラク(叩いて落とすこと)
この作業に10分を要す
乾燥機に移しスイッチを入れる
2回お金がかかる
もったいない
水事情の悪いこのカリフォルニアでは致し方無い

今度はエレベーターの中で独り言
だれが悪いのか、決まっている確認しない自分のせいだ

全てやった
やれやれ、ひと息つく暇もなくお昼の準備
今日は豆撰の栃尾うどんだ
丁寧に出汁を取り、マグロのカンズメとキュウリをあしらう
ついでに納豆も

午後からは少し余裕時間あり

いつもなら散歩に出かけるのだが
どうも血圧が高く前日の夜中に中古心臓がバランスを崩したので
休養、休養
何か観ると問われ
アメリカ映画では英語字幕が付いていてもストーリーが分からなければ絶対に面白く無い事は百も承知
そこで「天使にラブソング」を観ることにする
大好きな映画のベスト10入り作品だ
いい映画は泣かせる
いいなあ映画って

さてここから今日のポイントです
娘婿殿のご両親は私よりも一足早くイタリアに明日帰国するのです。
ということで今夜は最後の晩餐
愛想をつけて、ママにコーヒーを入れる
間違った
中に入れる小さなメッシュに入れずに沸かしてしまう
途中気がつきやり直し
私は誰にもこの失敗を言わない
素知らぬふりをして
ごうぎ(たくさん)時間のかかるコーヒーとなった

孫の入浴をみんなで見学
頭の上からイタリア語がドンーンとブルトーザーで運び込まれ
私はその中に埋まって身動きできないよ

やれやれ
晩餐メニューは、出前のピザ
ボーノ
でもイタリアの方がもっとボーノというイタリア家族

私の最後の晩餐は寿司に決めた

句読点はなるべく書きたく無い心境でした。









0 件のコメント: