興奮したのだろうか、いつもより1時間早く目が
覚めてしまった。
ここは泉慶さんの一室だ。妹とお友達に3人の
お部屋だ。
彼女達はスヤスヤである。
フジコ•ヘミングのカンパネラを思い出す。
ピアノからは遠くフジコさんの顔や手が見えない
S席にしなかったことを後悔した。
指揮者に手を引かれ、ステッキをつき
腰はまるで畑仕事をした老婆のように湾曲してい
る。
ご挨拶は「ようこそありがとうございます。今日
は体調が良くありません。手が痺れうまくひ
けるかどうか・・・」
口の中にこもった声は限りがありますと
言っているようだ。
隣には楽譜を持った女性が物静かに座って楽譜を
聴いている。
オーケストラと一緒に自分のパーツを弾く。
40%の聴力でよくオーケストラと合わせられる
指揮者の力だろうか。
フジコさんの生演奏は人生初である。
YouTubeやテレビ時々妹のCD
それだけだ。
いよいよクライマックス。ピアノだけの
演奏。もちろんカンパネラである。
クラッシクにうとい私には譜面通りなのか
フジコ流なのかわからない。
しかし私の耳に届く鐘の響きは
ひとりの演奏ではなかった。
何人もの人が弾いているように響き渡る。
まるでフジコさんの人生に関わった人が順番に
弾いているようだ。私の心に映像が流れてくる
最後はノクターンで終わる。
無言でステージから去る姿
黒のドレスに白のショール
このまま倒れてしまうのではないかと心配になる
生きているこの時は
「私の演奏」ですと言わんばかりの魂の演奏だっ
た。
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