2016年2月19日金曜日

事務所の小さな部屋で横たわる母

豆撰の事務所は8畳ほどの狭い部屋です。その中に
パソコン4台と机。冬になれば当然ストーブも登場します。
9時過ぎに事務所の戸があきました。
振り向けば、実母がだまって、ジタバタしながら長くつを
ぬぎ、中に入ってきます。
簡単な挨拶を交わす、いえ私が勝手に話しかけるだけ
なのです。
私「ねえ、ばあちゃんいくつになった?」
実母「わからん、いくつだ?」 
私「84でしょ」
それから妹のこどもについて
「Yは学校に行った?」
実母「わからん」
私はYのことなら関心を持ち、記憶の回路が目覚めるの
ではと思ってわざと聞くのです。
「Yは今何の仕事してるんだっけ?」
すると、少し考え、間をおいて答えるのです。
「先生だっけか?」と。
たったこの2つの質問に答えられる時もあれば答えられな
い時もあります。
実母はストーブの前に丸くなって横たわり
「さぶいっけん、なんかかけてくれ」と私に 言います。
私は、自分の着ていたジャンバーをそっとかけてやりました。

哀しくって、切なくって、涙がにじんでしまうのです。
でも、あんまり長く生きなくてもいいよと
心の中で呟いているのは私です。


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