2021年3月21日日曜日

おかあさんの被爆ピアノ



 テレビの音もしない。台所の音もしない。

夫の音もしない。

時計は11時を指している。

静かな私だけの空間にピアノのふたを開く。

ピアノをはじめて4ヶ月。ピアノが届いてひと

月。義父の旅たちの日だった。

簡単楽譜とはいえ私には難しい「悲愴」の曲

今日は特等席にひとりでいるような気分

で弾けた。

あの映画「おかあさんの被爆ピアノ」が作られて

いなかったら、一生この空間でこの時を感じるこ

とはなかったであろう。

ピアノはいつもより素晴らし音色を聴かせてくれ

たように思う。

日本映画復興奨励賞の受賞

届いた知らせに涙があふれた。

レミングスの夏試写会後におきた事故の報告

奇跡的に無傷だった五藤監督の執念。生かされて

思い続けてきた映画「おかあさんの被爆ピアノ」

へのご褒美であろう。

いつかまた私が弾きたくなる映画を作ってほしい

と願う。


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